多汗症治療について-療法・保険・病院-
2017/09/25
“異常なほど顔からものすごい汗が噴き出る” “手汗がひどくて人と手も握れない”
今まで汗に関して悩んだことはありませんか?みんなよりもちょっと汗をかきやすい体質なんだと思っていた方は、それが日常生活の支障になっているのであれば、もしかしたら汗の病気かもしれません。
発汗は私たち人間にとって体温を調節するために必要な働きであり、一般的な人で1日あたり約700mlの汗をかくと言われています。気温が暑い時や全速力で走った時、緊張した時、辛いものを食べた時などいろんなタイミングで発汗は起こっています。
しかしこの発汗の機能に何らかの異常が起こると、体の一部や全身から異常なほどの量の汗が生活に影響を及ぼすことがあります。これは「多汗症」という病気です。
多汗症はあまり社会的に知られていないため、ご自身で認識していなかったり、まわりの方から理解されなかったり、辛い経験をされたことがある方も少なくありません。
①そもそも多汗症とは?
汗は汗腺という汗を分泌する腺から出されます。この汗腺には“エクリン腺”と“アポクリン腺”の2種類があります。エクリン腺からは体温調節するためのサラサラの汗が出ているのに対し、アポクリン腺からは脂質やたんぱく質、アンモニアなどを含んだ汗が出ています。多汗症の方はエクリン腺が人より多かったり活発だったりするため、体温調節に必要以上の汗が出てしまうのです。
このエクリン腺は全身に分布していますが、主にワキの下や手足、そして顔や頭部に集中しています。その為、多汗症の方の中には「手の汗がひどい」「頭から汗が出る」といった部分的な汗に悩んでいる【局所性多汗症】の方や、全身の汗に悩んでいる【全身性多汗症】の方がいるのです。
②多汗症の原因
多汗症の原因はまだはっきり解明されていませんが、精神的ストレスや糖尿病などの他の病気によるもの、妊娠や更年期などのホルモンバランスの乱れ、タバコやコーヒーなどの生活習慣、遺伝による影響などが考えられています。
また多汗症の方は、汗をかいたらどうしようという不安・ストレスから汗をかいてしまい、その汗に焦ってさらに発汗が止まらないといった悪循環に陥ってしまうことも多いです。
③多汗症の治療方法
汗はご自身ではコントロールが出来ない問題ですので、クリニックで治療を受けられることをおすすめします。多汗症の治療方法は様々ありますが、そのメリットやデメリット、適応部位などを知った上で選ぶことが大切です。
当院でもご相談の多い「ワキ」の多汗症やわきが体質の方は、ミラドライや手術(剪除法)、ボトックスなどの治療方法があります。ミラドライは数年前からワキの多汗症治療として注目されている方法で、手術のようなキズ跡を残すことなく、ダウンタイムも短いため安全に手術と同等の効果が半永久的に持続するとされています。
他にも「手足」の部位にはイオントフォレーシスやボトックス治療、「顔・頭部」にはボトックス治療が最適です。イオントフォレーシス療法は患部を水に浸して微弱電流を流し、水素イオンで汗腺を塞ぐ方法で、じっと座っていられるお子様から治療を受けて頂けます。美容治療でもおなじみのボトックス治療は、ボツリヌス菌から抽出されるたんぱく質を用いて、交感神経を麻痺させることで汗を抑えます。ダウンタイムはほとんどなく、注入後3~4日ほどで効果が現れるため結婚式前や季節に合わせてされる方が多いです。
またホームケアとして制汗ローションや制臭クリーム、サプリメントなどもあります。
④多汗症は保険適用内?保険適用外?
多汗症は主に皮膚科、形成外科、麻酔科で治療が可能です。ただそれらすべての病院で多汗症に対応しているとは言えず、基本的には個々のクリニックを調べて頂く必要があります。ただ、保険が効くかどうかは治療方法によります。注射薬、手術、飲み薬は保険が適応されることも多いですが、症状によっては適応外の場合もありますので、医師と相談するようにして下さい。
記事監修
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大西 勝 院長
医療法人 大美会 大西皮フ科形成外科医院
国立香川医科大学医学部卒業後、京都大学付属病院形成外科、大阪赤十字病院形成外科、社会保険広島市民病院、角谷整形外科病院、冨士森形成外科医院を経て、平成9年より大西皮フ科形成外科医院を開業。