保険・適応のボトックス注射は脇の多汗症に効く?
2024/11/12
脇の下は、汗腺がもともと多い上に、緊張やストレスなどといった精神的ものや、気温の上昇や運動などによって影響を受けやすく、汗をかきやすい部位です。
重度の脇の多汗症、例えば原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)になってくると、臭いや衣服のシミなどで生活に支障が出てきたり、人前に出るのがストレスになったり、生活の質を大きく低下させることにもなりかねません。
原発性腋窩多汗症は、何か特別な原因がなく脇汗が多く出る病気ですが、これがワキガ発症の原因になることがあります。
そこで、症状を軽減できるボトックス治療について保険適用のケースをご紹介しながら解説します。
【目次】
ボトックスが保険適用となる条件
健康保険でボトックス治療を受けるためには、特定の疾患においての医療条件を満たしている必要があります。
そういった疾患とみなされた場合に保険治療が認められますが、それは医師の診断によって決まります。
ボトックスの保険適用ができる疾患の中には、脇のみに多くの汗をかく原発性腋窩多汗症があります。大量の脇汗が日常的に起きている状態で、日常生活に支障をきたすという症状です。
一般的に基礎疾患がなく、明らかな原因がないのに脇の下に局所的に大量の汗が6ヵ月以上あるようなケースに行われ、頭汗や手の平にかく汗、足の裏の汗、顔の汗には適用されません。
原発性腋窩多汗症とは?
原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)は、腋窩(脇の下)から過剰な汗をかく症状をいいます。
汗の分泌が促される病気があるわけでないにもかかわらず、脇に大量の汗をかく状態で、実際には多くの方に見られる症状と言ってよいでしょう。
原発性腋窩多汗症の診断基準は、原因不明の過剰な脇汗が半年以上続いていて、さらに次の項目が2つ以上あてはまる場合です。
●両脇とも同じくらい多くの汗をかく
●脇汗が多いために生活に支障が生じている
●週に1回以上、脇に過剰な汗をかくことがある
●このような症状は25歳以前からある
●同じような症状の家族や親戚がいる
●睡眠中は脇汗がひどくない
なぜ脇の下から多量の汗が出てしまうのか、発症のはっきりした原因は分かっていません。
ただ遺伝のほか、腋の下は交感神経の働きで汗が促されるためストレスや緊張で発症しやすくなると考えられ、また体温が上昇した状態でもこの症状が顕著となります。
原発性腋窩多汗症は、かゆみや痛みなどを引き起こすことはありません。
しかし、腋の下には、皮脂やタンパク質などが含まれた汗を分泌するアポクリン腺が分布しており、このアポクリン汗腺からの汗がもとで悪臭を放つことがあり、ワキガ発症の原因にもなり得ます。
また、衣服に汗ジミができるなど、日常生活を過ごす上でも支障が生じるようなことがあります。
重症な場合には人前に出ることをためらってしまったり、仕事や勉学に集中できなかったり、大きなストレスになっている方もいらっしゃいます。
原発性腋窩多汗症と多汗症の違い
多汗症とは、多量の汗をかくことで日常生活において支障をきたす症状の総称です。
その中で、特に原因や病気がなければ原発性多汗症といい、感染症や糖尿病など原因が明らかにあって、その影響を受けて起こるものを続発性多汗症といいます。
また、汗をかく場所によっても全身性と局所性に分かれ、体全体に汗をかくものが全身性多汗症、腋や手足だけ、顔や頭だけといった限られた場所だけ汗をかくものを局所性多汗症といいます。
原発性腋窩多汗症は、特に原因となる病気がなく、腋にのみ多量の汗をかく症状で、臭いや衣類の黄ばみ、大量の汗で日常生活に影響を及ぼすことがあるなどお悩みの方が多いといえます。
保険適用のボトックス注射は原発性腋窩多汗症に効くのか
ボトックスとは、ボツリヌス菌が作るタンパク質から生成された薬剤で、交感神経から汗腺への情報伝達を遮断する働きがあります。その作用で汗の量を減少させることができます。
重度の原発性腋窩多汗症へのボトックス療法は、健康保険が適用されますので、脇の皮膚内に注射でボトックス薬剤を注入することによって発汗量を減らすことができます。
効果の出方や程度、持続期間には個人差がありますが、だいたい汗の分泌を抑える効果は、2~3日で現れ、その後、6ヵ月ほど持続します。
効果を維持するためには、4~6ヵ月に一回の頻度で投与することがおすすめです。
またボトックス注射だけでなく、外用薬として1日1回塗って頂くエクロックゲルもあるので合わせて検討いただければと思います。
記事監修
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大西 勝 院長
医療法人 大美会 大西皮フ科形成外科医院
国立香川医科大学医学部卒業後、京都大学付属病院形成外科、大阪赤十字病院形成外科、社会保険広島市民病院、角谷整形外科病院、冨士森形成外科医院を経て、平成9年より大西皮フ科形成外科医院を開業。