ミラドライと手術はどっちがおすすめ?
ワキガの治療法を調べると、それぞれメリットやデメリットがあって結局何が良いのか分からず、なかなか治療に踏み切れないという方もいらっしゃいます。
デリケートなお悩みであるワキガの治療は、ご自身が受ける施術の内容や術後のダウンタイム、そして効果などから判断する必要があります。
現在、ワキガや多汗症治療で行われているミラドライですが、このマシンが登場する前はワキガ治療といえば切開する手術(剪除法)が主流でした。
この2つの治療法はアポクリン腺に作用する治療という点では同じですが、それぞれ異なる点もありますので、今回はそれぞれ両者の違いをご紹介しながら解説いたします。
【目次】
メスを使う手術(剪除法)とミラドライの違いとは?
剪除法とミラドライについて、まずはそれぞれの基本的な治療を説明していきます。
■ミラドライ
マイクロ波と呼ばれる電磁波をワキガの生じた皮膚に照射し、アポクリン腺とエクリン腺の2種類の汗腺を破壊。その働きをほぼなくしてしまう治療をいいます。
ミラドライは米国のMiramar Labs社が開発し、2010年に日本に登場した新しいワキガおよび多汗症の治療機器です。
電子レンジにも使われるマイクロ波には、水分に吸収されると熱を発するという性質があります。汗腺は水分が多く含まれている組織のため、ミラドライはマイクロ波を照射することで生じさせた熱で汗腺を破壊します。
皮膚を切らずにワキガを根本から治療できるミラドライは、ダウンタイムがほとんどなく、傷跡が残る心配はありません。施術の翌日から普段どおりの生活ができます。
■剪除法
剪除法は、ワキガの生じた部分をメスで切開し、ひとつひとつアポクリン汗腺を取り除いていく治療法です。
目視で確認できるアポクリン腺をできるだけ切除し、臭いがなくなるように施術していきます。臭いが強めなワキガの方におすすめです。
施術後、数日間は患部を固定して安静に過ごしていただきます。
もとの生活に戻るまで2週間ほどかかります。場合によっては痛みが出ることもあり、鎮痛薬などを使用しながら術後の経過を見守っていく必要があります。
ミラドライと手術(剪徐法)、効果の違いは?
施術の内容が理解できたところで、気になるのはより効果が高いのはどちらかという点ではないでしょうか。実際に効果に優劣をつけることは難しいのですが、以下のような効果の出方があります。
■ミラドライ
ミラドライで治療した場合、1回で70~80%、2回で90%以上、術後の汗や臭いの減少が見られるといわれています。
ミラドライでは、アポクリン腺を皮膚の上からマイクロ波を照射して取り除くという方法で行われます。
照射出力が強すぎると脇下にある上腕神経を損傷したり、熱傷による副作用を起こしたりといったリスクを伴います。
そのため出力を調整しながら、部位によっては弱めなければならないこともあります。
ワキガとともに多汗も軽減できるという効果の幅広さに関しては、ミラドライが優れているといえそうです。
■剪除法
術後の臭いは、術前と比べて80~90%ほどは減少し、その効果は基本的に半永久持続するというものです。
ただし、アポクリン腺を取り過ぎるとまた別の危険が生じるため、全てを除去することができません。
また、手術した部分以外にも少量のアポクリン腺は存在するため、臭いが完全になくなるということにはならず、多少は残るものとされています。
なお剪除法は、アポクリン腺汗腺を取り除く施術ですので多量の汗に対しての改善はあまり見られないといえそうです。
ダウンタイムの違いはどの程度?
■ミラドライ
照射後の回復には個人差がありますが、傷やダウンタイムはほとんどなく、施術の翌日から普段の生活にお戻りいただけます。
患部が腫れる場合がありますが、1~2週間で治るでしょう。まれに施術した皮膚に違和感の出る場合やしこりが発生する場合もありますが、1~2か月ほどで回復します。
■剪除法
手術中は麻酔をしているため痛みはありませんが、術後に麻酔が切れると痛みを感じる場合もあります。
傷跡は1本、数㎝ほど生じますので、1~2週間は患部を固めて出血を防ぎ、体の安静を保っていただきます。この間は、禁酒禁煙、車やバイクの運転などは禁止になります。
施術当日の入浴は控え、医師の許可が出るまでは傷口を濡らすことも控えましょう。
抜糸は10~14日後に行い、その後シャワー浴が可能になり、2~4週間で運動も可能になります。
まれに皮膚が硬くなり、色素沈着が生じることもありますが、3~6ヶ月ほどで落ち着いてくるでしょう。
費用の違い
■ミラドライ
【保険適用外】両ワキ1回 330,000円 2回目 ¥148,500(※1年以内)
■剪除法
【保険適用】両ワキ 約60,000円 + 固定用ボレロ14,300円
ミラドライと剪徐法の比較まとめ
臭いの改善にはどちらもおすすめできますが、臭いと汗の量にお悩みなら、ミラドライの方が有効な治療法だといえます。
またミラドライは、傷も残らず術後のダウンタイムもほぼなく、一度の手術で長期的に持続する効果が期待できます。
剪徐法は、抜糸まで定期的に診察や消毒が必要になり、普通の生活に戻れるまで1カ月ほどかかります。
ただ、費用も見逃せないポイントです。剪除法は症状によって保険適用がされます。
適用できるかは医師の診察により、必ず保険適用価格で受けられるわけではありませんが、比較的手頃な料金で済む場合があります。
一方のミラドライは、長い目で見るとお得な治療法です。一度受けると定期的な施術は不要でワキガと多汗症どちらにも半永久的な効果が見込めます。
剪除法は保険が適用すれば少ない出費で済みますが、適用できない場合は30万円を超えることも少なくありません。さらに、多汗症が見られる方は別の治療を受ける必要も生じることがあります。
【ミラドライがおすすめの方】
傷跡を残したくない
ダウンタイムが短い治療を希望
施術時間が短い治療にしたい
メスを使う手術に不安がある
効果があり副作用もない施術をしたい
【剪除法がおすすめの方】
保険適用で自己負担の少ない治療を望む
効果が確実で再発リスクが少ない
脱毛効果がある
剪除法 | ミラドライ | |
---|---|---|
効果継続時間 |
永久 |
半永久 |
傷痕 |
残る(皮膚切開の為) |
残らない |
アフターケア
(翌日からの生活) |
約2週間のガーゼ固定・安静 その後の通院 |
なし |
ダウンタイム |
比較的長い |
短い |
治療時間 |
約60~90分 |
約60~90分 |
記事監修
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大西 勝 院長
医療法人 大美会 大西皮フ科形成外科医院
国立香川医科大学医学部卒業後、京都大学付属病院形成外科、大阪赤十字病院形成外科、社会保険広島市民病院、角谷整形外科病院、冨士森形成外科医院を経て、平成9年より大西皮フ科形成外科医院を開業。