痩せたらワキガは治るの?
周りに強いニオイを放ってしまうワキガは、遺伝のほかに後天的な生活習慣や食事によっても発症することがあります。肥満の方がなりやすいともいわれますが、ワキガとは臭いの発生原因が違う場合もあって、一概に痩せればワキガが治るということはいえません。逆にダイエットをしたために、体臭がきつく感じられることもあります。今回は、そんなワキガと太ることにどんな関係があるのか、体臭との違いなどをお伝えし、ワキガかどうかのチェック方法や予防法を解説します。
【目次】
肥満だとワキガになりやすい?
肉類や脂っこい食べ物を好む食生活から体脂肪が増え、ワキガの臭いが強くなる可能性があります。脂っこいものを食べた翌日は体臭や排泄物がいつもより臭うのと同じで、脇の臭いも強まります。また太っていると汗をかきやすいことも、ワキガ臭を生む原因になります。厚い皮下脂肪が体内の熱を逃がすのを邪魔して、さらに汗をかくため、雑菌が繁殖しやすい環境を生み出してワキガ特有のニオイを発することに。
また汗には、ナトリウムやカリウムのほか、アンモニアや乳酸というニオイ成分も含まれています。これらは一度、汗腺の分泌部に溜まり血液に吸収され、その残りが汗として出てきます。いわば、ろ過されて出てくる水のようなもの。しかし、肥満の方は多量の汗を一度にかくので再吸収される時間がなく、アンモニアや乳酸を含んだまま臭いのある汗になるのです。また太っていると脂肪細胞が大きいため毛細血管が圧迫されて血行が悪くなるので、脂肪酸が汗に混ざって臭いがします。
ワキガと体臭の違いは?
■体臭は、汗や皮脂が原因のもの
汗や皮脂、垢が皮膚に存在する雑菌で分解され、その過程で臭いのあるガスが発生したものが体臭です。気温の上昇や運動して体温が上がると、それを下げるため汗腺から汗が出されます。汗腺にはアポクリン腺のほかにエクリン腺があり、エクリン腺は体全体に分布していて、出る汗の成分はほとんどが水分でサラサラしています。この汗に汚れが付着して時間が経って蒸れると、細菌が増え体臭が起こります。脇や足の裏、頭皮などから発生します。
■ワキガは、アクポリン汗腺からの汗が原因
鼻をつくような独特の臭いのするワキガは、脇や性器の周辺にあるアポクリン汗腺から出る汗が皮膚にいる常在菌によって分解されたことにより発生します。アポクリン腺から出る汗は、タンパク質や脂質なども含まれています。ワキガと診断された場合は、手術やレーザーなどの病院での治療が必要になります。
ワキガの見分け方
ワキガには以下のような特徴がありますので、ご自身でも確認してみて下さい。
■耳垢がねっとりしている
耳の穴は、ワキガ臭の元となる汗を分泌するアポクリン腺が存在するといわれています。耳垢の湿りはその分泌物によって起こるため、耳垢が湿ってねっとりしている方は、ワキガの可能性が高いと考えられます。
■両親か、どちらかがワキガ
アポクリン腺の数は遺伝によるものとされ、成長により増減することはありません。ワキガも遺伝として受け継がれやすく、両親がワキガの場合は約75%、一方のみの場合は約50%の確率で遺伝すると考えられています。
■黄ばんだ汗ジミができる
アポクリン腺から分泌される汗は、タンパク質や鉄分、リポフスチンという色素成分が含まれています。これらの分泌がある時には、汗ジミの色が黄色く、くっきり残っていますので、ワキガの疑いがあります。
■脇の下の毛に白い粉がつく
脇の毛に白い粉のようなものが付着する方も、ワキガである可能性が高いといえます。付着した粉は、アポクリン腺からの分泌物が蒸発して乾いたものです。
ワキガと体臭の対策方法
次に挙げるものは、体臭にもワキガの臭いにも有効ですので、まずは生活の中から原因を取り除いて行きましょう。
■毎日入浴して体を清潔に!
臭い予防には、体を清潔に保つこと。1日1回お風呂に入り、体全体をきれいに洗いましょう。頭皮の地肌も指の腹で洗うようにします。また髪を洗った後は、すぐ髪を乾かしましょう。髪が湿ったまま寝ると雑菌が増え頭皮臭の原因となります。
■汗をこまめにふく
かいた汗をそのままにしている間に蒸れて雑菌が繁殖し始めます。できるだけこまめに拭き取りましょう。柔らかい素材のもので優しく拭き取り、帰宅したらシャワーを浴びる習慣を持つと予防になります。
■制汗剤を使用する
デオドラント効果のある製品も上手に活用して、汗を抑える工夫をしてみることもおすすめです。臭いの原因はかいた汗にありますので、大量の汗を抑えることで予防効果が期待できます。
■適度な運動をする
運動習慣がないと汗腺の機能が低下してしまい、汗をかくとカリウムなどのミネラルも一緒に排出されやすくなります。そこに雑菌が繁殖し臭いの原因になります。軽く汗ばむ程度の有酸素運動は、汗腺を鍛え酸化を抑えることができ体臭予防にも効果的です。
■飲酒、喫煙を控える
過度な飲酒や喫煙は、アポクリン汗腺の働きを活性化します。臭いのある汗をかきやすいため飲酒や喫煙は控えめにしましょう。
■食事の改善
高カロリーで脂質の高い食事は皮下脂肪を増やし、アポクリン汗腺を活発化させます。肉などの動物性タンパク質の食べ過ぎは体臭につながるので、大豆、魚、卵、乳製品をバランスよく食べましょう。また暴飲暴食も体臭発生の原因となるので控えること。バランスのよい食事は、生活習慣病を予防し、疲労の蓄積を緩和して体臭予防にも非常に効果的といえます。
■ストレスを溜め込まない
ストレスが続くと交感神経の働きが活発になります。冷や汗や暑くないのに発汗することもあり、汗の量が増加してしまいます。ストレスの原因を取り除くことをおすすめします。
セルフでは限界があるのでクリニックへ
ご自身でできる臭い対策はありますが、ワキガそのものの改善には効果が得られない場合が多いため、医療機関で相談するのが一番の近道でしょう。手術しなくてもボトックス注射やレーザーなどの方法で治療を行えますので、改善に向けての治療をおすすめします。
記事監修
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大西 勝 院長
医療法人 大美会 大西皮フ科形成外科医院
国立香川医科大学医学部卒業後、京都大学付属病院形成外科、大阪赤十字病院形成外科、社会保険広島市民病院、角谷整形外科病院、冨士森形成外科医院を経て、平成9年より大西皮フ科形成外科医院を開業。